社会人のための読書
仕事の帰りが特別遅いというわけではありませんが、読書ペースが落ちてきてしまいました。テレビやYouTubeなどは心身ともに疲れていても、受動的に情報がはいってくるのですが、小説となるとどうでしょう。能動的に文章を整理し、物語を自身の頭脳でつくりあげていかなければなりません。ですが、読了したあとは、達成感と共に、その世界の余韻に長く浸ることができると思うのは私だけではありません。
そうは言うものの、社会人ともなると、読書の時間を設けるのも一苦労ですし、ご家庭を持っている方だと尚更なことでしょう。
そこで、数年「青空文庫」の作品を扱って評論をした私が、短い時間でも読める作品をピックアップしていこうと思います。今回は、「菊池寛」作品をいくつか紹介していきます。
菊池寛の世界
もともと夏目漱石や芥川龍之介と同じ時代の作家ですが、漱石にその才を認められず、弟子になることは叶いませんでした。芸術思考の漱石とは対照的に、大衆的でストーリー性の強さが菊池の作風だと言えます。
一方で芥川は菊池を慕っていたようで、菊池も彼の才能は高く評価していたようで、金銭的な援助もおこなっていました。また文藝春秋を創刊者であり、記者たちに自宅のご飯を振る舞っていたのだとか。そうした彼の人情味あふれる人柄は作風にも反映されており、どこか人の暖かさや義理堅さを感じるものが多いのも特徴です。
青空文庫読者が選んだ、菊池寛作品
・恩讐の彼方に
・大島が出来る話
「譲吉」は高等商業の予科に在学中、故郷にいる父が破産して退学の危機に直面したことがあります。そんな彼を救ってくれた人物こそ、同窓の友人の父、「近藤氏」だったのです。以来、彼は「近藤夫人」の手から学資を頂いていました。そして、学校を卒業して社会人になっても彼と彼女の関係は変わることはなく、譲吉は何かあると近藤夫人を頼り、彼女は彼女で彼の欲しがるものを与えていました。ですが、そんな彼でもたったひとつだけ手に入らないものがありました。それが「大島絣の揃い」でした。彼は大島を買いたいとは思いつつも金銭の問題から購入には至らず、それを買う機会を次第に失っていきます。そんなある時、譲吉は電報でお世話になっていた近藤夫人が突然亡くなったことを知ることになります。これまで彼の生活を影で支えていた人物の死を聞いて、譲吉の心には大きな穴が開いてしまいます。
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